阪神淡路大震災 20 周年事業

加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸 2015

宮本佳明「芦屋川左岸堆積体」(1995)

日時:1月10日(土)〜18日(日)
会場:ギャラリーA(1F)

「芦屋川左岸堆積体」
仁川、夙川、芦屋川、住吉川、石屋川といくつもの天井川を越えて、西へ西へと理由もなく自転車のペダルをこいだ。見慣れた風景は壊れていても、残された土手をひとつ越えるたびに、肉体の苦痛と同時に安らぎに似た感覚があった。地震で六甲山は13cm高くなったという。天井川も造山運動の遠い結果だ。震災や水害という避けようのない自然災害の上で生きてきた私たちの歴史を、地形という形で伝えられないものか。芦屋市内で発生した瓦礫のうちコンクリート、土といった安定した材料の全量を、芦屋川左岸沿いに2.5kmにわたって積み上げ、六甲山から海へと連なる抑揚のある土手状の地形をつくろうと考えた。一般に自然災害の経験は、ただ防災機能の強化へと向かい、結局は忘却されてしまうことが多い。これはそういった負の記憶に地形という具体的な形態を与えることで、日常の身体性や風景の中に顕在化させる試みである。


宮本佳明
建築家、大阪市立大学大学院工学研究科兼都市研究プラザ教授。兵庫県生まれ、東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。博士(工学)。1996年第6回ヴェネツィアビエンナーレ建築展(共同作品)金獅子賞。1998年「『ゼンカイ』ハウス」でJCDデザイン賞ジャン・ヌーベル賞、JIA新人賞。2007年「クローバーハウス」で日本建築家協会賞。2008年「『ハンカイ』ハウス」でJCDデザイン賞金賞。2012年「澄心寺庫裏」で日本建築学会作品選奨。主著に『環境ノイズを読み、風景をつくる。』(彰国社)、『Katsuhiro Miyamoto』(Libria)。